株式会社ジーフット/イオン株式会社

グループ各社とともにダイバーシティ経営を推進するイオングループ

グループ各社とともにダイバーシティ経営を推進してきたイオン。そのグループ内にあって、靴の専門販売店である「ジーフット」の取り組みは高い評価を受けています。その「ジーフット」において、女性初の人材開発部部長となり、先ごろ、経営企画本部長に就任された冨田芽衣さんにお話を伺いました。併せて、イオンのダイバーシティ推進室の藤田紀久子さん、橋本実佳さんにもグループ全体の取り組みについてお聞きしました。

(プロフィール)
冨田芽衣(とみためい)さん
株式会社ジーフット 経営企画部長
2005年、イオン入社。2009年からジーフットに出向し、2013年からエリアマネジャーに。2015年、自ら希望してジーフットに転籍。2016年9月、女性初の人材開発部部長に。2021年3月からは経営企画本部長に就任。

 

――ジーフットの会社概要や事業内容などについて教えてください。

冨田:イオングループを中心に、「グリーンボックス」「アスビー」といった店舗ブランドで、現在、全国に842店舗を展開している靴の小売りチェーンです。2009年に「ツルヤ靴店」と「ニューステップ」が合併してジーフットになりました。この2社のほかにも地域に基盤をもつ多様な靴の小売事業者が合併を繰り返しながら成長をしてきた背景があり、これは「フットウェアのリーディングカンパニー」を目指す弊社の強みにもなっています。経営理念として「健康的で履きやすい魅力的な靴をリーズナブルに提供すること」を掲げており、その実現のために、1つは「人材づくり」、もう1つは「商品づくり」の面で特長のある取り組みをしています。
まずは「人材づくり」です。全身を支える「足」を覆うのが「靴」です。その靴の販売には、洋服などとはまた違った接客の難しさがあると考えています。履き心地や履きやすさがなければ、お客さまに安心して購入していただけません。お客さまの足にフィットする靴を選ぶことは足の健康にもつながります。そこで、正社員からパート・アルバイト社員に至るまで、すべての従業員が自信をもって接客できるように、靴のフィッティングスキルに特化した研修を全従業員に向けて行っています。そして、そのスキルを認定する「フィッティングアドバイザー」や「フィッティングマスター」といった社内資格制度を設けています。現在、5,000人ほどの従業員の内約2,700名がフィッティングアドバイザーの資格を持っています。
続いて「商品づくり」です。健康というキーワードを踏まえ、独自のプライベートブランドの開発に力を入れています。特に、履き心地をメインにした商品開発において、女性に特化した「ヒールミー」という業態を立ち上げました。外反母趾やうおの目、たこといった女性に多い悩みを解消するために、女性のバイヤーが中心になって商品開発を行っています。

――冨田さんのこれまでのキャリアや現在の業務内容は?

冨田:新卒でイオンに入社しました。おもちゃや婦人服売り場などで4年間働いたあと、ジーフットの前身にあたるニューステップに出向し、初めて靴の販売に携わりました。そこから店長やエリアマネジャーを経験したあと、この会社でもう少し頑張りたいという思いが強くなり、出向から転籍という形で2015年にジーフットの社員になりました。2016年からは東京の本社に異動となり、弊社では女性初となる人材開発部の部長に就任。社内教育や研修制度の体制づくりに取り組みました。2019年に約50店舗ある婦人靴専門店を統括する事業部長としてもう一度営業職を務めたあと、2021年3月からは経営企画本部長の職責を担うことになりました。会社の中期経営戦略を考え、その実現を推進していく部署で、毎日のように社長とコミュニケーションをとっています。

――ジーフットのダイバーシティ推進の基本的な方針について、具体的な取り組みなども含めて教えてください。

冨田:3つの基本方針を、社長自ら発信しています。まず、互いの違いを尊重して認め合う環境をつくり、一人一人が共振しつづける活力ある会社。続いて、連帯感を共有し、「生き生きと働きたい」「もっと活躍したい」をかなえる会社。そして、女性が結婚、育児をしながらでも活躍しつづけられる会社。この3つが、ジーフットが目指している、あるべき会社の姿です。
中でも女性の活躍は、経営戦略の大きな柱の1つになっています。と申しますのも、ジーフットでは、店頭に立って販売業務に従事している従業員の約75%が女性なのです。いわば、店舗を支えている女性が活躍できる職場環境の構築は、ジーフットの成長には欠かせないのです。
そうした流れの中で、例えば、社内制度は、私が入社した当初から比べてもかなり充実しています。パートナーの転勤や育児・介護などでやむなく退職した場合に、将来の復職をサポートする「リ・エントリー制度」。また、「結婚特例」として、「結婚時転居停止申請」や「人事コース区分変更申請」という制度もあります(「転居停止申請」は本人の入院や家族の介護にも対応)。そして「育児支援」として、「時短勤務制度」の利用もできます。これまでは結婚・出産を機に退社する女性社員も多かったのですが、復職して育児をしながら働く女性も増え、そのための支援制度も手厚くなっています。

――LGBTQに対する取り組みはどうですか?

冨田:LGBTQに対しては、実際のところ、変に意識するのもおかしな話ではないか、といった意見があったり、ダイバーシティに関わっているプロジェクトメンバーの中でも、社内報であえて取り上げる必要はあるのか、といったためらいの声もあったようです。それでも何度も議論を重ねた結果、社内報でLGBTQのことを取り上げたんです。背景には、社内にカミングアウトしているゲイの従業員がおりまして、その人のインタビューを紹介する形で、LGBTの簡単な説明も記事の中に盛り込みました。

――その記事に対する反応はいかがでしたか?

冨田:社内でも有名な人なんですよね、彼自身が。なので、「ああ、出たんだ」くらいな反応で、さほど驚きはなかったです。おおむね好感触で、彼の思いも伝わったと思います。

――現状を踏まえ、これから冨田さんは、どんな取り組みを進めていきたいですか?

冨田:復職の支援や、子育てをしながら働ける環境も整ってきているところで、女性には、もっともっとマネジャー職、管理職に挑戦してもらいたいと感じています。しかしながら現状、管理職へのハードルの高さを感じている女性社員が多いのも事実です。そこに弊害があるのならそれを取り除き、ハードルを感じている女性社員たちにチャンスの場をもっとつくっていきたいです。そのために、例えば、ダイバーシティ・プロジェクトとして、そういう女性メンバーを集めて、次の段階に進むにあたって、どのように働いていくのがいいのかといったことを、一緒に考えていきたいです。そうしないと、会社自体も変わっていかないのではないかと思っています。次は、女性の営業部長を誕生させたいですね。

イオン全体としてのダイバーシティ推進

イオン株式会社 
ダイバーシティ推進室 室長
藤田紀久子

――イオン全体のダイバーシティ推進の基本方針について、教えてください。

藤田:「イオン」はグループを統括する持株会社で、約300のグループ企業とともに活動しています。そのなかで、主要な企業、約80社を中心に、代表取締役の方が「ダイバーシティ推進責任者」となり、人事や現場のダイバーシティの担当者が一緒になって、グループ全体のダイバーシティを高めていく活動をしています。
冨田さんのお話を聞いていて、ジーフットはグループと相似形だなと思いました。つまり、イオンにも、いろんな地域のいろんな小売店やスーパーなどがM&Aを通じて成長を続けてきた歴史があります。今からさかのぼること約50年。3つのスーパーが合併し、イオンの前身のジャスコがスタートしたときに、どこの会社出身なのかといった違いにとらわれずに、お互いをリスペクトして能力や実績を重視しながら、人事や制度を作っていこうという方向性の原型が、ほぼできているんです。
それはイオンになっても同じで、そういった異なるバックグラウンドをもつ、自分と異なる人を仲間にして働いていくことは、ごく当たり前なことなのです。だから、いま、ダイバーシティということで、例えば、国籍、性別、障がいの有無、性的指向、性自認などの違いについても、会社の歴史や風土を強みにして、推進していければと感じています。人権については、「イオンの人権基本方針」という形で明文化もされています。

――具体的な取り組みにはどのようなものがありますか?

藤田:イオンのダイバーシティ推進活動のキーワードは“ダイ満足”です。「従業員と従業員の家族」と「お客さま」と「会社」の満足を実現していこうというものです。その実現に向け、ダイバーシティ推進室がオーガナイズして、関連するセミナーや研修を実施し、またグループ内のベストプラクティスの表彰制度として「“ダイ満足”アワード」を毎年開催しています。実はジーフットはアワードの常連で、グループ内でも取り組みが進んでいる企業の一つです。事業特性を活かした好事例を共有し、お互いにもっと高めていこうとする場があることは励みにもなりますし、グループとして大切なことではないかと考えています。
LGBTQに関しては、2015年度から新入社員オリエンテーションの研修に盛り込んでいます。2017年度からはグループの管理職を対象に「LGBT対応マナー研修・ユニバーサルマナー検定」を実施し、これまでに約8,000人が受講しています。1年前からのコロナ禍で集合研修が難しい状況もあって、現在、オンライン研修のコンテンツを準備し、より多くの方に受講してもらおうと考えています。その中で、特にグループ企業の好事例などを全グループで共有していきたいです。また、今後は、グループ内の人事やダイバーシティの担当者が共通に抱えている課題について、一緒に解決できるような仕組みを構築できないかと考えています。

 

イオン株式会社 
ダイバーシティ推進室
橋本実佳

――コロナの影響で、残念ながらオンライン開催になってしまいましたが、2020年から東京レインボープライドに参加していただいています。

橋本:イオングループは、各社さまざまな業態で、いろいろなバックグラウンドをもつ企業の集団です。そうした中で、LGBT対応マナー研修やユニバーサルマナー検定などにも力を入れてきました。国内外を合わせると約58万人の従業員がいますので、グループ全体で考えると研修の影響力もそれなりに大きいとは思うのですが、東京レインボープライドに参加させていただいたのは、そういう社内的なところから、もっと外に私たちの取り組みや考え方をきちんとPRしていく必要があると考えたからなんです。どんな人でもここで働けるんだという、心理的安全性がきちんと担保されていることを外に向けて発信していきたかったわけです。

藤田:ここでの「発信」というのは、社内外のステイクホルダーの方々に認識していただくという意味もあります。ただそれだけではなく、グループ内にはカミングアウトしていないLGBTQ当事者もたくさん働いていると思うのですが、そういう方々が心理的安全性が守られていると感じ、あるいは少なくとも、そうなるようみんなが努力し改善しようとしていることが伝わることに意味があると考えています。キーワードは「誰もが活躍できる」だと思っています。

――お二人のお話を受けて、冨田さんはどのように感じられましたか?

冨田:まずは相手を尊重し、知ることから始まる。あらためて、そう思いました。これは接客業の基本でもあります。相手を知り、相手の立場にたって接客をする。今思えば、私がイオンに入社したのも、そういうイオンの風土を他の企業より色濃く感じたからなんですよね。相手の立場であったり、人権であったり、そういうところを深く理解していくというのは、イオンのエッセンスなんだと感じています。だから、それを、ジーフットとしても社内外に伝えていきたいと、あらためて思いました。

取材・文/山縣真矢

■株式会社ジーフット

(企業プロフィール)
来れば楽しい靴選び わかる! そろう! ぴたっとくる!
ジーフットは、『Asbee(アスビー)』『Greenbox(グリーンボックス)』等フットウェアのストアブランドを展開する靴専門販売会社です。全国のイオンモールを中心に現在821店舗を展開しています。
イオングループの靴専門販売店。
http://www.g-foot.co.jp

 

■イオン株式会社

(企業プロフィール)
イオンは、お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重、地域社会に貢献する企業集団です。ダイバーシティ推進は社会課題への対応だけではなく、経営戦略の一つと捉えています。ダイバーシティが生み出す、従業員とその家族、お客さま、会社の満足を“ダイ満足”と名付け、グループ横断的な繋がりを意識し様々な活動に取り組んでいます。
イオングループを統括する持ち株会社。
https://www.aeon.info/diversity/

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