KDDI株式会社

2020年より東京レインボープライドのスポンサーとなったKDDI。
LGBTQ+への企業の取り組みを指標化する「work with Pride」では最高位となるゴールドを受賞、さらにパートナーシップ申請から一歩進んだ「ファミリーシップ申請」がベストプラクティス賞とダブル受賞した同社の取り組みについて人事担当者の大内さん・山田さんから話を聞いた。

1人の社員の声が会社全体を変えた


きっかけは2013年に社員相談窓口に入った1件の問い合わせだったという。

「2013年ごろ、トランスジェンダー当事者の社員から問い合わせがありました。
自分の性を偽るのではなく、自認する性で働きたいという内容で、具体的な事例が身近だということに我々もはじめて気づき、いろいろな配慮への取り組みをはじめました」

産業医への相談や、当時LGBTQ+取り組みをすでに行っていた先進企業にヒアリングをし、対応を考えていったという。

「ご本人の意向を聞き、一緒に上長の方に理解を求めるような働きかけをしたり、氏名の変更や、トイレや健康診断について本人希望をヒアリングしたりするなど、取り組みをはじめました。学生時代はオープンにしていたのに、入社して数年間カミングアウトをしないことに関して、違和感を感じられていたようです。
このまま自分を偽って生きていていいのか迷われて、相談をもらった時も、退職を辞さない覚悟でお話してくれました。
本来はそんな風に思う必要もないのですが、そこまで真剣に考えていることを私たちも真摯に受け止めるべきだと思い、この勇気ある声に耳を傾けて施策をはじめました。こういった声が上がってきた事自体が貴重だったと改めて思っています。
この頃はまだLGBTQ+に対する知識や理解が社内にほとんどない状態でしたので、まずは職場風土の醸成が重要だと考え、人事の責任者や、企業倫理担当者に対し、正しい知識を持ってもらうためのセミナーを開催しました」

専門家によるセミナーをはじめe-learningで全社員が毎年研修を受けているほか、レズビアン当事者として働いている人の疑似体験ができるVR等を利用した体験型イベントを実施。
「LGBT」という言葉に対する認知度も、取り組み当初は全社員の1/4程度だったのが、2020年度アンケートを実施した結果、98%まで上がってきたという。


また、2020年には社内アライコミュニティを立ち上げ、より深い理解と行動ができることを目指している。

「言葉として知っているだけではダメで、それをいかに行動にうつせるかだと考えています。最低限言ってはいけない言葉があることを理解し、それを越えて、誰かが言っていることに対して指摘できるとか、カミングアウトしたい時に、その方が自分の伝えたいように伝えられる環境であるとか、もう一歩進んだ環境づくりが必要であると感じています」

パートナーシップから「ファミリーシップ」へ
社会を変えたいという思い


取り組みの一貫として、2017年に「同性パートナーシップ申請」を導入。
その3年後である2020年に「ファミリーシップ申請制度」をスタートさせた。
これは、KDDI社員が同性パートナーと子どもを持った際に、親権が社員にない場合でもその子どもを社内制度上の「家族」として扱うというものだ。

「ある時、パートナーシップの申請をしている社員から『将来的に子どもを持ちたいと考えている』というご相談がありました。
その時に、同性パートナーシップの先には『子どもを作る』という選択肢があるんだっていうことに恥ずかしながら気づきまして、そのために会社が支援できることを考え、実現したものがファミリーシップ申請です」

相談を受けてから何が問題かを調べ、日本で同性パートナー同士が子どもを持つと、現在の法制度上では共同親権を持つことができず、扶養に入れることができなかったり、緊急時の病院での対応で困ったり、万一親権を持つ同性パートナーが亡くなった時に子供の親権を持てないことがあったり、といった、通常の男女の夫婦であれば「当たり前」に享受できる権利が得られないということを知った。

「その相談をしてくれた方で印象的だったのが『自分は子どもを持ったとしたらその時に遺書を書きます』という言葉です。
血の繋がりがなくて何も残してあげられないから、その子になにかを残すための手段として、そういったことを考えざるをえない状況だということに衝撃を受けました。
一企業として法律を変えることはできないけれど、会社としてできる限り寄り添えるようにという思いを込めて、この施策に取り組みました。
あえて『ファミリーシップ』という聞き慣れない名称をつけたのは、私自身もこのことに気づかなかったというか、同性パートナー同士で子どもを持つということを正直想像したことがなかったという反省もありまして・・・。多様な家族のカタチに対し、世の中の意識が向けられるようにという思いを込めて、この名前をつけました。
同性婚訴訟であるとか、法律化に向けて世の中は動いているんですが。一企業としてもこういう動きがあるということを社会に示すことで、変化を後押しする一助になれればと思っています」

また「Business For Marriage Equality」にも賛同企業として参画。
これらの施策は社内外からの反響も大きく、当事者の社員からは会社に対するエンゲージメントがより高まったという声もあった。

その動きに呼応し、兵庫県明石市でも2021年1月から「パートナーシップ・ファミリーシップ制度」がスタート。全国ではじめての、同性パートナーカップルと一緒に暮らす子どもを家族として認める制度だ。

「やれることをそれぞれの企業がやる
いいところはどんどん真似をしあう

「弊社は社員から上がった声をきっかけに社内制度を変えてきたのですが、実際に声を上げられる人はすごく少ないと思います。
『当事者がいないから着手しない』ではなく、先行して出来ることから少しずつ進めていく会社の姿勢が、カミングアウトできずに悩んでいる当事者社員を救う一助になるかもしれません。
やれる企業がやれることをやって、良い制度はどんどんお互いに取り入れて横連携していくことによって広がりのスピードはもっと早くなるだろうと感じています」

実際にKDDIとしても、他社へのヒアリングや東京レインボープライドへの参加によって、良い取り組みを取り入れてきた。
こういった取り組みはどんな規模の会社でもできるという。

「弊社も他社さんから『LGBTQ+に対してどういうことをしていったらいいかわからないんです』と伺うことがあるのですが、そんなにお金がかかる施策をしてきたわけではありません。
例えば、採用時のエントリーシートの性別欄をなくすことであるとか、社内の服装規定を廃止した際に、性別で特定の装いを強制しないことを伝えるとかで会社の姿勢を伝えることができると思います。

ダイバーシティの世界は、企業同士で競い合うよりも一緒にやって行った方が進むと思っています。
我々も東京レインボープライド等を通して、他社さんの良い取り組みがあれば取り入れて今があります。
他社さんの参考になれるものが私たちからも発信できて、世の中を一緒に変えていくことができればという思いをずっと抱いています」

大きな会社の小さな取り組みが、さらに大きなうねりを生んでいく。
働く人、そして全ての人のためのダイバーシティ&インクルージョンを目指して、KDDIはその歩みを止めない。

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