NTTグループ

マイノリティだけでなく誰もが能力を発揮できる環境作り
NTTのダイバーシティ&インクルージョンへの取り組み

2019年からTRPに参加しているNTTでは、それ以前からLGBTQに関する施策に積極的に取り組んできている。その背景にはLGBTQに限らず、性別、人種、国籍、宗教、信条、文化、出身地、障がいの有無などに関わらず、一人ひとりがありのままで、安心して働くことができる企業であろうとする姿勢がある。ダイバーシティ&インクルージョンを掲げるフィロソフィについてNTTダイバーシティ推進室室長の池田円さんに聞いた。 (聞き手/宇田川しい)

2018年から異性カップルも同性カップルも同様の制度に

――NTTではダイバーシティについてこれまでどのように取り組んでこられたのでしょうか?

池田円さん NTTでは2007年にダイバーシティ推進室を設けました。当時、女性の活躍を中心として多様な人材を企業の力にしていくことが求められている状況があったことが背景にあります。そういった人材を私たちのサービスや商品開発に活かしていこうと考えました。

――LGBTQについてはどのような取り組みをされてきましたか?

池田 2016年に性的マイノリティに関する取り組みを始めることを会社として宣言し、同性でパートナー関係にある社員に対しての制度を整える取り組みを開始しました。まず初めに、結婚などのライフイベントに関わる制度を同性パートナーにも適用しました。その後、慶事だけでなく扶養手当 や単身赴任手当など手当関連の制度や海外勤務など服務に関するものなど、配偶者及びその家族に関わる制度全般について同性パートナーにも適用したのが2018年からです。この制度は同性カップルに限らず異性で事実婚をしているカップルも利用することができます。

――すでに同性カップルも異性婚のカップルと同様になっているのですね。どのように利用するのですか。

池田 家族情報を入れるシステムがあり、ここにパートナーとして登録すれば適用されます。登録時にパートナーシップ証明書の提出は必要ありませんが、自治体や民間団体が発行するパートナーシップ証明書を添付される場合には、受け入れています。

――カミングアウトしていない人でも利用しやすい工夫はされているのでしょうか?

池田 まず最低限の承認フローしか通らないシステムですので個人情報は守られるようになっています。ただ、一部制度利用(※)申請時には直属の上司は知られることになるので、新任管理者を対象に、承認時のアウティングや個人情報の取り扱いに関する注意に関する研修やLGBTQ当事者の方によるLGBTQ理解とインクルーシブな職場づくりのための研修を実施しています。
(※)…看護休暇、休職、短時間勤務等

       LGBTQ理解とインクルーシブな職場づくりのための研修 集合写真

また、LGBTQ当事者を支援するALLYを募集しており、ALLYを表明するオリジナルグッズを製作し、普段から身に着けるようにしています。

遠隔操作ロボットで家から出られない人が受付業務を担当

――2019年には初めてTRPに参加されています。

池田 グループ各社にも声をかけて200名ほどがパレードに参加しました。この体験によって当事者とアライ、グループ各社間に一体感が生まれたことは大きな収穫でした。TRPの数か月後に参加者が集い、フォローアップミーティングを行いましたが、「これから、こんな取り組みをしたいよね」、「こんなイベントもやりたいね」というようなアイデアがたくさん出ました。
グループ横断的な取り組みとしてTRPのようなイベントへの参加経験はそれまでなかったのですが、LGBTQやダイバーシティ&インクルージョンについて話し合い、認識を深め、人的ネットワークを構築するとても良い機会になりました。

2019 TOKYO RAINBOW PRIDE

ALLY会の開催模様

――LGBTQ以外についてもダイバーシティの取り組みをされていますね。

池田 NTTグループは社員の40%が海外で働いていますし、特に研究所の採用は国籍に関わらず優秀な人材が集まっており、グローバル化が進んでいます。業務やスケジュール管理などのシステムは日本語だけでなく英語のマニュアルも用意するなど、日本人しかいない前提ではない言語の対応が求められています。

――障がいのある方についても取り組んでいますね。

池田 様々な取り組みをしていますが、まずは雇用の確保は大前提です。法定雇用率は2.3%ですが、現在、NTTグループとして2.44%の雇用率になっています。特例子会社がグループに4社ありますが、特例子会社だけで障がい者雇用をまかなうという考えではありません。現在、障がいのある社員が3,900名以上働いていますが、このうち特例子会社に所属するのは940名だけです。グループ全体で、意識の面でも、ファシリティの面でも障がいのある人を受け入れられる環境を構築しています。また、「雇用」はスタートであり、実際に働いていただいている障がいを持つ社員一人ひとりが、それぞれの能力を活かしていきいきと活躍できる場を会社として提供できているか、が重要だと考えており、「活躍推進」に力を入れているところです。

NTTクラルティ 塩山ファクトリーでの作業風景

――遠隔操作型分身ロボットを使った取り組みは面白いなと思いました。

池田 ありがとうございます。OriHime-Dというロボットを、自分の分身として、遠隔から操作することで、身体に障がいのある人でも業務を行えるようになりました。大阪や愛知に住む外出が困難な社員がPCやタブレットでロボットを操作することで、東京のNTT本社の受付業務を行っています。採用もリモートで行い、今まで一度も実際にお会いしたことがないメンバー4人でシフトを組んで業務を遂行してもらっています。完全なリモート勤務ですね。ICTを活用して、障がいのある人が活躍できる場を広げるという良い一例となっています。今後は受付業務以外でも、遠隔操作型分身ロボットOriHimeの活用の場を広げていければと思っています。

OriHime-Dを用いた新たな働き方は、社外でも評価されました

――テクノロジーを活用しながらというのがNTTらしいですね。

池田 ICTの活用によって変えられることは多いと思います。これからも新たな挑戦をしていきたいですね。

新型コロナ対策にも役立った多様な働き方の取り組み

――介護や育児をサポートする取り組みもされています。ダイバーシティ&インクルージョンという枠組みはLGBTQや障害のある人といったマイノリティだけでなく、マジョリティにとっても働きやすい環境を作ることにつながるということですね。

池田 育児や介護もそうですし、自身の病気など、働く時間や場所に制約がある人が能力を発揮できる環境作りに取り組んできました。様々な働き方を実現するという取り組みをする中で、テレワークも推進してきました。BCPのため、全社員に一度はリモートワークを経験してもらうという取り組みを実施していたことが、期せずして新型コロナへの対応にも役立ちました。

――危機管理にも役立ったわけで、誰もが働きやすい環境作りがいかに重要かが分かります。

池田 誰にもそれぞれの事情があります。 LGBTQだから、障がいがあるから、女性だから、だけではなく、それぞれの目に見えない事情に応じた働き方を受け入れられる職場であって欲しいですよね。誰もが時間や場所に縛られず能力を発揮出来るように、会社として環境の整備と文化の醸成を進めていかなければいけないと思います。こうした取り組みは社員一人ひとりのためでもあり、会社が成長していくためでもあります。同時にこうした取り組みを企業として発信していくことで社会全体をより良くしていくことに貢献できればいいなという思いもあります。

自宅でリモートワークをする池田室長

課題は、意識をいかに変えていくか

――池田さんはアメリカで仕事をされていた経験もあり、NTT以外の日本企業での勤務経験もおありだそうですが、一般的な日本企業とアメリカの企業の違いはどう感じられていますか?

池田 違いはたくさんありますね(笑)。

――そうでしょうね(笑)。なにしろジェンダーギャップ指数120位ですからね……。

池田 日本では、ダイバーシティ&インクルージョンの重要性について本当に理解している人もいれば、そうでない人もまだまだいます。ダイバーシティということを掛け声では言ったとしても、例えば女性を役員のような重要ポジションに指名するということになると、腰が引けるようなところも実際はまだあると思います。以前、職場でそういう場面に出くわし「女性に任せられるのか?」という意見が出て驚いた経験があります。

――「◯◯さんに任せられるのか?」じゃないんですね。

池田 若い世代はさすがに、もうそういう人は少ないと思います。問題は昔の教育を受けてきた世代ですね。そういう世代のマインドチェンジが必要でしょう。

――そういった研修などもあると思いますが、なかなか変わらないものなのでしょうか?

池田 頭では理解できても、ふとしたときに出る本音はまた違うということはあると思います。自分では気づいていない偏見の意識、アンコンシャスバイアスが問題なんですね。バイアスは誰しもが持っているものですから、アンコンシャスバイアスについての研修はやはり全社員に対して必要です。また最近では、ダイバーシティ&インクルージョンに関する研修は、対象を主に管理者にシフトしています。そして、今後は管理者の中でも上位層に対する研修へとシフトしていく必要があるのかなと思っています。今は課長を対象にしているものを部長に拡大するとか。

――たしかに上の意識を変えることは重要ですね。先ほどの同性カップルの制度の件でも直属の上司の研修が必要とのことでした。上司に理解がなければ制度があっても利用できませんよね。

池田 多くの企業のトップはダイバーシティの重要性をきちんと理解してると思うんです。ところが、その下の部長クラスの理解が低いという印象がありますね。

――上の世代の意識を変える良い方法はないですかね?

池田 家族向けのガイドブックを作りたいなと思ってるんですけどね。

――家族向け?

池田 働く女性のお父さんお母さんや親戚の方などに向けたハンドブックですね。NTTという会社が女性を重要な戦力として見ているんですよ、優秀な人材に性別は関係ないんですよ、ということを親世代にも地方の皆さんにも伝えたいんです。子育てや家事を女性がやるべきことだと考える、その考え方自体を日本の社会が変えていただかないと、会社で期待されて頑張る女性社員は家のこととの両立で疲弊していってしまいます。働く女性自身が自ら世間と戦うだけではなく、企業や学校や、できるだけ多くのところが声を上げ続けることで、古い教育を受けた世代や、その世代に育てられた我々も、徐々に意識を変えていけるんじゃないかと思うんです。

――社会を変えていくという意味ではTRPのようなイベントに参加して発信していくことも効果的ですね。

池田 NTTのような一般的には「固い」と思われている企業がダイバーシティについて発信していくことには意義があると思っています。社内に向けても発信は重要ですね。「NTTが参加してるTRPってなに?なんのためにやっているの?」と友達や家族や誰かに聞かれたときに、社員一人ひとりが自分の言葉で説明できるようになることをめざしています。

国内外のNTTグループ社員や家族から集まった写真を用いて作成したモザイクポスター

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