ヴィーブヘルスケア株式会社

HIVのスペシャリスト企業ViiV Healthcareが挑戦する
偏見のないインクルーシブな社会の構築

HIV/AIDS領域に特化した製薬企業であるViiV Healthcare。専門性の高い技術でHIVゼロを目指す同社は、同時に「H I Vと共に生きる人を誰1人置き去りにしない」をミッションとして掲げ様々な社会貢献活動も行っている。ヴィーブヘルスケア株式会社、代表取締役社長であるサイモン・リさんにそのフィロソフィを聞いた。 (聞き手/宇田川しい)

何のために仕事をしているのか、常にミッションを自覚する重要性

――ViiVでは様々な社会貢献活動をされていますね。その背景にある企業理念はどのようなものなのでしょう。

サイモン・リさん そもそも当社は、その誕生からして独特です。HIVに特化したジョイント・ベンチャーとしてイギリスのグラクソ・スミスクライン社とアメリカのファイザー社が出資して作られた経緯があります。H I Vと共に生きる人々を誰1人置き去りにしないというのがミッションです。

――非常に明確なミッションですね。

 後に日本の塩野義製薬も資本参加し、日米英で協力し、それぞれの技術、専門性を活かしあいながらHIVゼロを目標に努力しています。HIVがなくなると当社は成り立たないのですが、それでも、HIVゼロという非常に大きな目標を目指しています。

――そうしたミッションは社員の皆さんに広く共有されているのですね。

 社員も一人ひとりが常にミッションを意識し行動しています。私たちのミッションを単なるスローガンにしないために、あらゆる会議において本題に入る前にミッションを確認することから始めるんです。今、会議をしているこの時間もミッション達成のためであると、常に我々自身でリマインドしながら日々の活動をしています。

――なるほど、会社の業態自体が理念とほぼイコールなんですね。

 私たちはHIVに感染している人を患者さんとは呼びません。単にHIVのウイルスを持っている人であるに過ぎないからです。people living with HIVと呼びます。この、HIVと生きる人々のことを中心に据え、この人たちのために何ができるかをまず考える。もちろん営利企業ですから利益を作らなければいけません。しかし、HIVと生きる人々のために何をすべきか考え、正しいことを正しく行えば利益は後からついて来るはずです。

――たしかに利益を作らないとサスティナブルな取り組みに出来ませんね。

 好循環をいかに作るかということですね。利益がないと新たな製品の開発につながらないので、社会的な責任を意識しながらバランスを取っていく必要があります。だからこそ、何のために仕事をしているかというミッションを常に自覚していることが大切になってきます。

当事者や支援団体、コミュニティと共に働く

――そういった会社の成り立ちを背景にして様々な社会貢献活動をされているわけですね。

 社会貢献活動もやはり中心になるのはHIVと生きる人々と、その方々を支援する組織、HIVの影響を受けやすいコミュニティの方を主な対象としています。支援というよりは、協働、一緒に働いていこうという考え方です。

――具体的にはどのような活動をされているのですか。

 HIVをめぐる医療の状況は昔と比べて変わってきています。ですから、過去に作られたHIVのイメージを新たにするための活動に力を入れています。HIV陽性でも適切な医療によって、ごく当たり前の日常を送れるということを広く社会に知ってもらう。また、そのことで検査を受ける心理的負担を軽減し、多くの人に検査を受けてもらえるようにする。そのために、新宿2丁目の仲通りに大きな啓発看板を出しています。

――見たことがあります。

 これは、私たちだけで出したのではないんです。2丁目のコミュニティやHIV陽性者の当事者団体、支援団体と一緒にメッセージやデザインを考えました。そのほかHIV啓発のイベントもコミュニティの方々と一緒に行っています。

――TRPへの参加もそうした活動のうちの一つですね。

 TRPには2015年から協賛していて、2017年から会場でブース展示を行なっています。これは当社の社員にはとても良い経験になりました。というのも、製薬会社といってもほとんどの社員は普段はあまり直接、HIV陽性の方と接する機会を持てないんです。TRPでは、直接会ってお話しすることで、よりリアルに自分たちの仕事を認識できたかと思います。

U=U、HIVの正しい知識が偏見を払拭する

――最近、U=U(ユー・イコール・ユー)という言葉をよく目にするようになりました。
 U=UすなわちUndetectable=Untransmittableというのは抗HIV療法を継続して血中のウィルス量が検出限界値以下の状態が6か月以上持続した状態では、他の人に性行為を通じたHIV感染は全くしないという意味です。この科学的に根拠付けられた事実を広く理解してもらうことは重要だと思っています。

――HIV、AIDSに限らず、病というものがスティグマ、偏見をもたれてしまうことは大きな問題です。U=Uの啓発はHIVのスティグマを取り除いていくためにも有効ですね。

 スティグマこそ日本における大きな課題になっていると思います。日本は治療については国民皆保険など社会保障制度もあり他国と比較して充実していると言えるのではないでしょうか。またHIV治療を受けている方が薬を毎日きちんと服用しているかという率も高い水準になっています。ですからスティグマと、社会からの疎外感を減らしていく必要があると思っています。

――意識を変えていくというのはなかなか大変ですね。

 社会に対して発信していくのも大事ですが、まず私たち自身が偏見を保たないようにすることが重要だと思っています。実は当社にはLGBTQのグループというものがありません。

――それは意外です。LGBTQなど自社のマイノリティのグループ活動を支援する企業も増えてきていますよね。

 もともとViiVという会社の成り立ちからして差別をなくしていこうという考えに基づく部分が大きいのです。LGBTQのグループを作るということが私自身で壁を作ることになる。逆に私たちはLGBTQもみんな一緒だと言いたいんです。

――なるほど、それこそがダイバーシティだという考えなのですね。

 世の中には様々な人がいます。ジェンダー、性的指向、人種、考え方も違う。それを素直に受け入れることがダイバーシティです。一般的にはダイバーシティ&インクルージョンと言うことが多いですが、当社ではインクルージョン&ダイバーシティと言います。ダイバーシティというのはすでに存在するんです。ただそれがバリューにつながるためには組織のカルチャーがインクルーシブでなければいけない。ですから、まず初めにインクルージョンなんです。多様性というものが空気のようになることが私たちのゴールだと思ってます。違いはあって当たり前で、それはどちらが良い悪いではない。違いについてお互いリスペクトして、それをいかに発展へつなげていくかを考えるべきでしょう。

他者を理解し共感することが自分自身の人生も豊かにしてくれる

――HIVをめぐる社会環境はこれまでずいぶん変わってきたと思います。今後、私たちは社会としてHIVをめぐる問題にどのように取り組んでいくべきだとお考えですか?

 先ほども言いましたがスティグマの問題ですね。HIVという言葉が一般的になる以前、AIDSという言葉がスティグマを付与されて使われていました。それをいまだに引きずっている部分があります。過去にどうして偏見が作られてしまったのかをきちんと検証すると共に、今の HIVの現状について正しい知識を知らせていく必要があるでしょう。

――スティグマについてはCOVID19についても同様の問題がありますね。アメリカではトランプがチャイナウイルスというような言い方をして憎悪を煽り、現在、アジア系へのヘイトクライムが起きています。

 昨年、アメリカではアフリカ系への差別の問題もクローズアップされBLMのムーブメントがおきました。当社はそういう抗議活動にも賛意を示しました。 BLMの問題は当社に直接は関わっていないかもしれませんが、決して差別は許さないという姿勢を持つ当社としては、全ての差別は私たちへの挑戦と考えます。差別を許すことは出来ません。COVID19に関しても患者自身もそうですが、当初は患者と接触する医療関係者が忌避されたりと様々な偏見を生んでいます。また、今後、ワクチンを摂取した・していないで偏見が生まれる危惧もありますね。

――そうした偏見をなくすためにはどうしたらいいとお考えですか?

 難しい問題ですね。他者について学ぶことによって共感を持って生きるということでしょうか。私は韓国人で、今も日本語を学んでいます。先日、「猫の手も借りたい」という日本語独特の表現を知って面白いなと思いました。なんで他の動物じゃなく猫なんだろうとか不思議に思いながらも、日本への理解が深まった気がしました。同じようにたとえばHIVと共に生きる人々についてもより深く知ることで共感を持つことが出来るのではないでしょうか。これはHIVの問題に限らず共感を持って生きる能力はこれからの時代に大事になってくると思います。

――他者の視点に立って物事を考えるということは必要でしょうね。

 そのことは自分自身を豊かにしてくれると思います。他者の視点に立って物事を見て、共感する。それは人とつながっていると感じることです。ひいては自分が人類の一部だという大きな意識を持つことでもある。これは素晴らしいことではないでしょうか。

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